研究・研究者紹介

ゲノム医療研究 研究・研究者紹介

ゲノム医療に貢献しうる最先端研究に携わる、特に若手研究者へのインタビューを通じて、取り組みと成果、課題や展望を聞き取り、ご紹介するコラムです。このコラムによって、研究の“今”を感じていただくだけでなく、新たな研究連携や研究者間交流が生まれることを期待しています。

※所属や肩書は、インタビュー当時のものです。

※「推薦論文」では、研究者個人として推薦したい論文をタイプ(Exceptional, Must Read, Recommended, Fundamental)と共にご紹介いただきました。

検査体制の構築も医療
― 国立がん研究センター中央病院が推進する、がん関連多遺伝子パネル検査
角南 久仁子

国立がん研究センター中央病院 病理・臨床検査科 医員

がんの治療における抗がん剤の選択は、従来は部位別であったが、近年ではがん細胞における遺伝子変異を調べて遺伝子変異別に行われることが増えてきた。国立がん研究センター中央病院では、「がん関連多遺伝子パネル検査(NCCオンコパネル)」の開発と実施を進めるプロジェクト「TOP-GEAR(Trial of Onco-Panel for Gene-profiling to Estimate both Adverse events and Response) 」が2013年から行われている。目指すは、個々の患者ごとの遺伝子変異に基づいた「個別化治療」だ。

ケミカルバイオロジーで挑む
遺伝病が引き起こすRNAスプライシング異常の機構解明と創薬
網代 将彦

京都大学大学院医学研究科 特定助教

遺伝病は酵素やイオンチャネルなど、さまざまな遺伝子の異常により引き起こされ、ヒトでは単一遺伝病だけでも約6000種に及ぶ。これに対して、RNAの機能やプロセシングの異常は遺伝病との関連が深く、遺伝病のうち約35%がRNAスプライシングの異常によると見積もられている。
H28~30年度 ゲノム創薬基盤推進研究事業「スプライシング操作化合物を対象としたファーマコゲノミクス解析に基づく遺伝性難病治療薬の開発研究」(研究代表:京都大学大学院医学研究科 萩原 正敏)では、生物学と有機化学を組み合わせるケミカルバイオロジーを用いて、RNAスプライシング変異の化合物応答を体系的に理解し、創薬につなげようとしている。その先陣を、同研究科 創薬医学講座で担うのが、網代 将彦 先生だ。

臨床ゲノムデータベースで切り拓く、
難聴の原因遺伝子診断と個別化治療への道
西尾 信哉

信州大学医学部 人工聴覚器学講座 特任講師

先天性難聴は、新出生児1,000人に1人に認められる最も発症頻度の高い先天性障害の1つだ。(参考資料1)「先天性難聴の発症要因として一番頻度の高いのは遺伝子が関与するケース。おおよそ6~7割ぐらいであることが報告されています。難聴の原因遺伝子としては、現在までに約100種類の原因遺伝子が同定されており、非常にヘテロジェナイエティ(遺伝的異質性)の高い疾患です。異なった原因遺伝子が同じ難聴という症状を呈するため、臨床症状だけから原因遺伝子を推定することは非常に困難です。」と西尾 信哉先生は語る。

ロングリード ― とめどない繰り返しとの暗闘。あるいは、隠された意味を見据える力 市川 和樹 助教/鈴木 裕太 特任助教

東京大学大学院新領域創成科学研究科

2017年秋、科学技術振興機構(JST)と東京大学から「染色体の交差部位(セントロメア)が進化のカギ〜メダカのセントロメアDNA配列の部分的解読に成功〜」と題された共同発表のプレスリリースが配信された。新領域創成科学研究科の森下 真一 研究室(以下、森下研)と理学系研究科の武田 洋幸 研究室の共同研究である。

遺伝学的・環境学的にゲノムや遺伝子を包括的に調べ、糖尿病とその合併症のメカニズムを解明する 鈴木 顕

東京大学大学院医学研究科 糖尿病・代謝内科 研究員

厚生労働省による「2016年国民健康・栄養調査」では、日本で糖尿病が疑われる成人の推計が、2016年に、調査開始以来初めて1,000万人台の大台に乗った。また、発症に至らない糖尿病予備群は1,000万人と推計されている。血中の糖をコントロールするホルモンであるインスリンの分泌が悪い、分泌のタイミングが遅い、糖を取り込む際の細胞でのインスリンの効きが悪いといった状態が糖尿病の引き金になる。自己免疫の作用などで膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンが分泌されなくなる1型糖尿病と、主に遺伝的素因と生活習慣が原因となってインスリンの分泌や効きが悪くなる2型糖尿病に大別され、糖尿病患者の9割以上は2型糖尿病だ。「糖尿病の人とそうではない人、あるいは、糖尿病かつ合併症がある人・ない人の遺伝情報や生活習慣などの環境因子を比較することによって、日本人における2型糖尿病関連遺伝因子の徹底的な探索を行う予定です」と鈴木 顕先生は展望を語る。

ヒトゲノムプロジェクトが2003年に完了して以降、個人の一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism:SNPs)をSNPアレイなどの新たなテクノロジーによってゲノム規模で調べられるようになった。そして、比較的身近な疾患に共通するSNPsなどの遺伝子変異を全ゲノム領域にわたって関連解析するゲノムワイド関連解析(Genome-Wide Association Study:GWAS)が盛んになり、すでに、さまざまな疾患の感受性遺伝子が同定されている。一方で、次世代シーケンサー(Next Generation Sequencer:NGS)による全ゲノム解析も飛躍的に進んでいる。 「多くのサンプルの解析に長けたSNPアレイと、あらゆるタイプの多型情報を高精度に解析できるNGS、この両者の長所を活かした解析手法を開発し、これまでに蓄積したデータだけでなく、今後得られるデータにも使えるようにするのが目標です」と河合 洋介先生は話す。

遺伝的な多型や変異は、がんなどをはじめとする病気のリスクに影響する。しかし、この要因を解き明かす鍵となるヒトゲノム情報において、すべての遺伝的な変異や多様性が見つかっているわけではない。ヒトゲノムと遺伝的多様性の“地図”は未完成で、穴があるからだ。どこかわかっていて、どこがわかっていないかということも明確にしにくい。先行研究では充分だと思われていたとしても、地図情報として十分ではない可能性がある。
「自分たちは、シークエンスデータの新しい解析手法を開発し実験的な検証を行うことによって、その地図の穴を埋めたいと思っている。その穴にみんなが見逃している、重要な情報があるかもしれない。」と藤本 明洋先生は語る。

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2018年10月1日
西尾 信哉
信州大学医学部 人工聴覚器学講座 特任講師

2018年11月8日
網代 将彦
京都大学大学院医学研究科 特定助教

2018年11月26日
角南 久仁子
国立がん研究センター中央病院 病理・臨床検査科 医員