研究・研究者紹介

ゲノム医療研究 研究・研究者紹介

ゲノム医療に貢献しうる研究の“今”を、特に若手研究者の取り組みを通じてご紹介するコラムです。
「推薦論文」では、研究者個人として推薦したい論文をタイプ(Exceptional, Must Read, Recommended, Fundamental)と共にご紹介いただきました。
※所属や肩書は、インタビュー当時のものです。

遺伝学的・環境学的にゲノムや遺伝子を包括的に調べ、糖尿病とその合併症のメカニズムを解明する 鈴木 顕

東京大学大学院医学研究科 糖尿病・代謝内科 研究員

厚生労働省による「2016年国民健康・栄養調査」では、日本で糖尿病が疑われる成人の推計が、2016年に、調査開始以来初めて1,000万人台の大台に乗った。また、発症に至らない糖尿病予備群は1,000万人と推計されている。血中の糖をコントロールするホルモンであるインスリンの分泌が悪い、分泌のタイミングが遅い、糖を取り込む際の細胞でのインスリンの効きが悪いといった状態が糖尿病の引き金になる。自己免疫の作用などで膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンが分泌されなくなる1型糖尿病と、主に遺伝的素因と生活習慣が原因となってインスリンの分泌や効きが悪くなる2型糖尿病に大別され、糖尿病患者の9割以上は2型糖尿病だ。「糖尿病の人とそうではない人、あるいは、糖尿病かつ合併症がある人・ない人の遺伝情報や生活習慣などの環境因子を比較することによって、日本人における2型糖尿病関連遺伝因子の徹底的な探索を行う予定です」と鈴木 顕先生は展望を語る。

ヒトゲノムプロジェクトが2003年に完了して以降、個人の一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism:SNPs)をSNPアレイなどの新たなテクノロジーによってゲノム規模で調べられるようになった。そして、比較的身近な疾患に共通するSNPsなどの遺伝子変異を全ゲノム領域にわたって関連解析するゲノムワイド関連解析(Genome-Wide Association Study:GWAS)が盛んになり、すでに、さまざまな疾患の感受性遺伝子が同定されている。一方で、次世代シーケンサー(Next Generation Sequencer:NGS)による全ゲノム解析も飛躍的に進んでいる。 「多くのサンプルの解析に長けたSNPアレイと、あらゆるタイプの多型情報を高精度に解析できるNGS、この両者の長所を活かした解析手法を開発し、これまでに蓄積したデータだけでなく、今後得られるデータにも使えるようにするのが目標です」と河合 洋介先生は話す。

遺伝的な多型や変異は、がんなどをはじめとする病気のリスクに影響する。しかし、この要因を解き明かす鍵となるヒトゲノム情報において、すべての遺伝的な変異や多様性が見つかっているわけではない。ヒトゲノムと遺伝的多様性の“地図”は未完成で、穴があるからだ。どこかわかっていて、どこがわかっていないかということも明確にしにくい。先行研究では充分だと思われていたとしても、地図情報として十分ではない可能性がある。
「自分たちは、シークエンスデータの新しい解析手法を開発し実験的な検証を行うことによって、その地図の穴を埋めたいと思っている。その穴にみんなが見逃している、重要な情報があるかもしれない。」と藤本 明洋先生は語る。

バックナンバー動画

2017年9月 1日
藤本 明洋
京都大学大学院医学研究科 特定准教授

2017年12月18日
河合 洋介
東京大学大学院医学系研究科 特任助教

2018年1月31日
鈴木 顕
東京大学大学院医学研究科 糖尿病・代謝内科 研究員